写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.2234] 2025年2月14日  早春の日差しあれど烈風が吹きすさぶ日、中村梧郎写真展「人間と枯葉剤ーベトナム戦争終結から50年」(ポートレートギャラリー/2月12日まで)、佐伯剛写真展「かんながらの道」(2月17日まで/OM SYSTEM GALLERY)を巡った・・・

 

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最終日となる2月12日、何とかやり繰りをして中村梧郎写真展へ行った。久しぶりの個展である。

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彼が一貫したテーマとしてきたベトナム戦争時、米軍が散布し続けた枯葉剤と人間がテーマである。

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最終日の終了30分前なのに会場は混雑していた。会場担当者によれば、連日もの凄い人出だったという。「さすがに今日は少ないようです」と笑った。

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中村梧郎夫妻。30年ぶりくらいだと思うが、奥さまが直ぐにあいさつに見えた。もう40年近く経つと思うが梧郎さんのお宅へ行ったことが何度かあり、づいぶんとお世話何なった。それを覚えてくれていたのだ。山形放送の美人OLだった奥様に一目ぼれした梧郎さんが、足蹴く通って交際に至ったという自慢話を本人から聞いた記憶がある。僕が記念にと言うと「まあ~うれしい、小松さんに撮ってもらえるなんて・・・」と言って僕の前に二人で立ったのである。

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中村さんは、経済産業省認可法人の協同組合日本写真家ユニオンの設立発起人の一人である。当時、専務理事だった僕と些細な行き違いがあって以来、20年近く会うこともなく、話をする機会もなかった。いま考えれば「アホ」みたいなことだった。この日、無理をしても行って良かったとつくづく思った。じっくりと話したわけでもないのに、お互いに全くわだかまりがなかったのだ。逢った瞬間に、20年の歳月は何だったのかと思うほど以前と同じに自然に対話ができた。お互いに昔のことは忘れてしまっていたかのように・・・。

中村梧郎さんとは、たくさんの想い出があるが、何と言っても忘れられないのは写真の勉強会のことだ。1970年代前半に梧郎さんが勤めていた通信社が有楽町にあった。そこをたまり場にして、月1回~2回、通信社や新聞社の若手写真部記者を中心に集い写真について研究会をしていたのだ。ナショナル電気の広報室からも参加していた。年長だった梧郎さんがリーダー役になっていった。各自の作品を持ち寄ったり、内外の名作について研究したりした。今の僕があるのもこの勉強会は一つの礎だったと思っている。

中村梧郎さんをはじめ、今活躍している写真家・森住卓さん、写真家・藤田庄一さんをはじめ、尾辻弥寿雄さん、関次男さん、若橋一三さん、小倉隆人さん、故・小島定吉さんらも来ていた。みな日本写真家協会会員として活躍していたメンバーだ。時々、評論家の伊藤逸平先生らも招いていた。会が終わると安酒やつまみを買ってきて激論を交わした。時には有楽町から上野まで肩を組んで気勢をあげながら歩いていったこともあった。みな20代~30代の青春真っ只中の若者であった。

持っている写真は、梧郎さんが40代前半の頃、日本リアリズム写真集団が発行している雑誌「写真リアリズム」で、写真家・英伸三さんと対談した時に僕が撮影したもの。梧郎さんは「ずいぶんと若い頃もあったのだな~」と笑い、奥さまは「今の方がよほど素敵~!♡」と周りを笑いの渦に巻き込んでいた。
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日を変えて、昨年手術した腎臓がんの定期CT検査などが済んだあと、どうしても行かなければと思っていた佐伯剛さんの写真展会場のある新宿へ行った。

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このカメラで全ての展示作品の「針穴写真」を撮影したと言う。

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作品集も自分で制作している。信じられない価格で仕上がっている。上は新刊の『日本の古層VOI.5/かんながらの道』。左は昨年刊行した『VOI.4 始原のコスモロジー』。定価は各2、000円

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50号を世に送り出して廃刊した幻の名雑誌「風の旅人」編集長だった佐伯さん。編集者だったが、いつの間にか写真家にも。僕も「風の旅人」前期の頃に、2度大きな特集を組んでもらった。一つはヒマラヤの写真群だった。20数頁だった。もう一回は東京を舞台にした「都会の安息」シリーズ。こちらはモノクロ10数頁だった気がする。写真家の水越武さんの紹介で、紀尾井町のホテルニューオオタニ下の清水谷公園前にあった事務所を何度か写真を抱えて訪ねたことを想い出す。当時は威厳を感じて、僕よりもはるかに年上だと思っていた・・・。 いまは爽やか笑顔を見せている。

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神仏へのみちを感じさせる独特な雰囲気を醸し出している会場には、ひっきりなしの入場者が訪れていた。 ところで佐伯さん、初個展おめでとうございます~!♡☆ 合掌

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