写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.289] 2011年4月4日 「東北関東大震災支援・コスモス臨時写真展」に参加。「第57回櫛部妙有朗読会 森鴎外『高瀬舟』」を聴いた・・・・・。

「東日本大震災」の大被害を受けながらも地元・東北地方の人々は復興に向けて動き始めているが、一向に先が見えないのが福島原子力発電所の事故処理である。高濃度の放射能物質が大量に海に流出しているのに、それを止められない。流れ出している亀裂に生コンを注入したが効果がないので、東電や政府が切り札として試みたのが、赤ちゃんの紙おむつに使われている水分吸収剤と新聞紙と木材を切るときにで出る大鋸屑だという。残念ながら、これもまったくの効果がなかったという。僕は不謹慎ながらこのニュースを聞きながら思わず苦笑してしまった・・・・・。高い放射能が測定されている現場で命がけで作業している人たちには大変申し訳ないが、指示されているその作業が、新聞紙と大鋸屑を積める事かと思うと原子力と言う人類の英知を集めた科学の最先端であるべきものの対応としては、あまりにもお粗末ではないかと・・・・・・。素人ながら不安を通り超して笑いになってしまったのである。

毎日、テレビで流されている「ニッポンは強い国、ニッポンはひとつ、いまこそ団結しよう。信じている・・・・・・」などのステロタイプ化された言葉には、ヘきへきする。ある種の洗脳で怖い気さえおきてくる。それぞれが、それぞれの立場で、出来る事を背伸びせずに、長期的展望を持ちながらやればいいのであって、誰かにとやかく扇動される覚えはない。僕ら写真家は仲間の多くが現地へいち早く入って取材を続けている。阪神・淡路大震災の時もそうであったが、現地で自らが被災しながらも被災状況を撮影している仲間もいる。僕も彼らが撮影したものをできるだけメディアに発表できるように、出版社や編集者を紹介している。また、コスモスインターナショナルの呼びかけで、「東北関東大震災支援・コスモス臨時写真展」をやることになり、その呼びかけに80人の写真家が出品したという。僕ももちろん出品している。出品料のすべては義援金として送られる。

日程☆4月5日(火)~4月10日(日) 11時~17時まで

場所☆ギャラリーコスモス TEL03-3494-8621 (目黒駅徒歩約8分)

★明日から陸前高田、宮古、石巻など三陸海岸の思い出を少し書いていきたいと思う。僕の眼裏に焼き付けられている美しい海岸の町で出合った人々と光景を・・・・・・・。

 

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昨日、3日は2年ほど前から中国史研究家で作家の中村さんの紹介で知り合いになった櫛部妙有さんの「第57回 櫛部妙有朗読会 森鴎外『高瀬舟』」に出かけた。途中、地下鉄に乗車中突然に停止。「大きな地震が発生したため緊急停車しました」と車内放送が流れた。一瞬やな気分がしたがやがて電車は走り出した。こう毎日毎日余震が続くとマジに気が滅入ってくる。ともかく会場には開演前に無事着くことができた。彼女からは何枚も朗読のCDが送られてきており、聴いてはいたが実はライブで朗読を聴いたことはなかった。来年、生誕150年を迎える森鴎外の作品を今年は朗読するのだという。6月に「山椒大夫」、9月は「即興詩人」12月は「舞姫」と続く。興味がある方は(オフィス貴香:TEL・FAX042-973-6966)まで。

「知恩院の桜が入相の鐘に散る春の夕べに・・・・・・」ではじまる鴎外の小説『高瀬舟』は、95年前に書かれているがその元となった文章は約240年前の江戸中期に書かれた『翁草』のなかにある。その原文まで今回は朗読をしてくれた。短文である。当時、それを読んだ鴎外が内容をさらに膨らませて人間の持つ心根の有様を今日的なテーマへと深めたのである。現代にも通じる主題で、戦後最大の危機とも言うべきいまだからこそ、あらためて考えさせられた。わずか2~30人しか入れない会場であったが朗読中の1時間半はまるで江戸時代の世界へ誘われたような不思議な体験を味わった・・・・・・。

会終了後、櫛部さんファンの人たちと食事に行った。中村さんが「女性ばかりだから一緒に付き合ってよ」というからだ。僕が彼女と出会うようになったのは、「朗読をしている彼女を撮って欲しい」という中村さんの強い依頼からであった。しかし今まで1度も撮影しなかったが、今回はじめて6カットだけトライXフィルムで撮ってみた。鴎外が4年間のドイツ留学から戻った年から100年目の1989年に鴎外の取材に東西ドイツへ行った時に求めたライカM4で・・・・・・・。食事会は「成都」という四川料理の店だった。タロット占い師の人や東京医科歯科大学の講師でミジンコ研究をしている人などユニークな女性たちばかりで酒もみな強く、元気の素をたくさんもらえた楽しい会であった・・・・・・・。

 

 

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