写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.298]  2011年4月24日 「東日本大震災」で被災した写真仲間・佐藤浩視さんが、魂をこめて撮影した”無声の被災地”の表情をご覧ください・・・・・。

 

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あの1000年に一度と言われている「東日本大震災」がおきてから1ヶ月と2週間になろうとしている。被災地のみちのくも最初の頃は、冷たい雪に見舞われていたが、今はさくらの花が満開の季節を迎えている・・・・・・。日本列島はユーラシア大陸と太平洋に挟まれ、南北3000キロメートルに連なっている。気候も亜熱帯から亜寒帯まであり、変化に富んだ多種多様な生態系が古来より育まれてきた。世界的にも稀な火山国の日本の自然もまた麗しい。そこに出現した山河、湿原、湖、渓谷、海岸、島・・・・・・。みな美しく見事に調和のとれた景観を生み出しているのだ。その典型的な美しさが集中しているのが東北地方である。リアス式海岸の人をも寄せ付けない自然の美しさは、魚介類の宝庫でもあった。しかし、その三陸海岸一帯が今回の地震後の巨大津波によって壊滅的な被害を受けたのだった・・・・・・・。

 

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日本人は古来より幾多の困難な自然災害に見舞われながらも、大自然に対して畏敬の念をもち、寄り添いながら自然の恩恵を受けて生きてきた歴史がある。あれほどの被害に見舞われても、海水や泥水に浸かっても、梅や桜は今年もみちのくに春を告げたのである。大地は、大海は・・・・自然の回復力は逞しいほどに強靭なのだ。僕が一番不安なのは、この自然界にない人間が作り出したプルトニウムという元素によって稼働している原子力発電所の事故である。これはある意味、人間の利便性と富を生み出すために、約6億年をかけて創造されてきた自然界の法則を破壊してしまったことである。人間が自らの責任で、生命をかけて今回の事故には対処しなければならないのは、当然過ぎるほど当然だ。僕もその人間の一人であるのだから覚悟はしておくべきであろう。地球という星に生息する人間以外のすべての生命体に対しての重い責任があるのだが・・・・・・・。でもいまの僕らはあまりにも無力だ。

 

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僕の写真仲間に仙台在住で今回の地震で被災した佐藤浩視さんがいる。彼は(社)日本写真家協会の会員であるとともに、現在、(協)日本写真家ユニオン理事、(社)日本広告写真家協会東北支部長という要職を務めている写真家である。仙台と東京に会社を持つ経営者でもある。その彼が今回の大震災の日から、本来の広告写真の仕事をストップさせて、被災した各地を回り取材を始めた。「こんな写真を撮ったのですが、どこか載せてくれる雑誌を紹介してください・・・・」と何度か写真をメールで送ってきた。そのつど僕は出来る限り、写真についての感想や意見と出版社を紹介した。彼の努力もあってか、「週刊現代」、「週刊金曜日」などいろいろな雑誌、フランスの雑誌にも掲載が決まったという。よかった・・・・。ひとりでも多くの人たちに、被災した写真家が撮った写真と向き合って欲しいと思っていたから・・・・・。写真展は4月15日~27日、東京・六本木の「zenfotogellery」で開催中。中国・北京の「ZENFOTO」でも出品がきまったという。佐藤君の主な作品は次のサイトでスライドで見れます。被災した街のパノラマ写真は圧巻です。ぜひご覧ください。そして被災された人々とこころをつなぎましょう。  http://www.flickr.com/photos/sato-hiroshi/

☆写真は3点とも小説家、太宰治の故郷・津軽地方を2009年春に撮影したもの。詳しくは『太宰治と旅する津軽』(新潮社)をご参照ください。

 

 

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