写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.753] 2014年10月1日 <写真レポート★VOL・Ⅱ> 中国・雲南省西南地方、ベトナム・ラオス国境地帯に暮らす山岳少数民族を取材する旅(8月23日~9月2日)

労働の尊さを知る稲梯田          農民は藝術家なり稲棚田

幾千年耕して来し稲の原          山肌はすべて梯田や天高し

緑春という地早稲田の峪なりき       農民水牛蟻のごと稲の道     風写

 

早いもので、中国・雲南省西南地方の旅から戻って明日で1ヶ月が過ぎる。そして今日から10月。長月(陰暦の9月の異称)だ。この月をほかに、菊月、菊咲月、色どる月、小田刈月などとも季語ではいう。「九月尽」といえば、9月の末日をさすが、秋が終わる日のことを言うのだ。だから秋尽、秋尽くなどとも言う・・・・・・・。

ようやく<写真レポート★VOL・Ⅱ>をアップすることが出来た。上記の俳句は今回の旅の途上で詠んだ出来栄えの良くない句だが、これもその時の僕の心情が出ているので載せておくとしよう。第2回目は、8月27日の元陽から9月2日の昆明までの7日間で撮影した中から一部をセレクトした。人間が好きな僕の割には風景写真が多いと思うだろうが、先の句を見てもわかるが、僕は眼前に広がるその圧倒的な光景に圧倒されたのである・・・・・・・・・。

IMGP3967-001.JPG
8月27日。元陽郊外の紅河の岸辺。魚を売る露天と河を眺めながら水タバコを吸う人・・・・・・。
IMGP3994-001.JPG
紅河州・元陽県から緑春県へ行く途中は、写真のような棚田が続く・・・・・・。名もない、観光化もまったくされていない素朴な山村風景だ・・・・・・・・。
IMGP4045-001.JPG
標高2000mを超える山岳道路の風景は、めまぐるしく変化する。斜陽になった山の空はとりわけ美しい・・・。
SDIM4779-001.JPG
緑春県のハニ族の料理店で遅い夕食を取った。ウエイトレスの娘さんだが、やけに馴れ馴れしいね。僕はうれしかったが・・・・・・・・。
IMGP4116-001.JPG
8月28日。緑春県の中心部から南へ100キロメートル行ったラオス国境に程近い三猛郷鎮への途上の辺りも見渡す限り棚田が続く。 農民と水牛がのんびりと耕作していた・・・・・・・。
IMGP4188-001.JPG
ここは胡姑村という。ハニ族の小さな村だ。この村にNPOチベット高原初等教育・建設基金会(烏里烏沙理事長)が、小学校を建設するか、どうかの現地調査を兼ねて来ている。今回の同行者はみなこのNPOのメンバー。三猛郷の教育長をはじめ、学校関係者たちと会い、状況の説明などを聞いた。
IMGP4204-001.JPG

胡姑村小学校は、現在、1年生から4年生までで、158人が通っているという。近郊の19の村々から来ている。教室は4教室。先生は校長先生を入れて4人。先生たちは学校に泊り込んでいる。どの教室も暗く湿気が高く、黴臭かった。それに村自体が崖っぷちにあるので、平地が少なく、子どもたちが運動する場がないことが一番の課題だった・・・・・・・。写真は、学校の下から川の反対側の村を撮影したもの。

SDIM4814-001.JPG
一番きれいだった教室で。 NPOの理事長の烏里君(左)とこの小学校の李先生と三猛郷教育委員会の李さん。
SDIM4820-001.JPG
1階の日の当たりが悪いところが教室で、2階が先生たちの部屋になっていた。寝室も台所も仕事場もみな兼ねていた・・・・・・・・。
IMGP4236-001.JPG
胡姑村の豚さんに声をかけられた。「ねぇ~寄ってらしゃい。私をきれいに撮って・・・・・」と聞こえたのだが、空耳だったのだろうか・・・・・・。
IMGP4246-001.JPG
胡姑村からさらに60キロメートルほど奥地に入った所にひろがる口合徳梯田。この棚田をいろいろな角度から撮影して夕刻までねばった・・・・・・・・。
IMGP4262-001.JPG
この棚田は、ユネスコ世界文化遺産に登録されているとともに、中国の国家湿地公園にも指定されている。しかし、交通の便がよくないせいか、観光施設もなく、観光客などは一人もいないのがいい。
IMGP0011-001.JPG
広い棚田だが、目を凝らしてみると農民や水牛などが農作業をしている姿が見える・・・・・・。
IMGP4338-001.JPG
山の中腹の棚田のなかにある村々はどこも近代的な建物に変わっていた・・・・・・・。
IMGP0079-001.JPG
どのようにして耕していったのだろうか・・・・・・。
IMGP4361-001.JPG
何かヨーロッパの地中海の島の村に来たようなちぐはぐな感じがした・・・・・・・。広場や屋上などで農作業をしている姿が見えた・・・・・・・。
IMGP0067-001.JPG

IMGP0032-001.JPG

刻々と棚田の色が変化していく・・・・・・・。

SDIM4866-001.JPG

三猛郷鎮までもどり泊まった。29日の朝、町の屋台の食堂へ、毎朝食べているビーフンの麺を食べに行った。昨日の昼食も、夕食もハニ族のこの店で食べた。町で一番美味い店という評判だった・・・・・・。

IMGP4415-001.JPG
老人と少女を撮影する烏里烏沙君。泊まったホテルの前で、すぐに見物人が集まってきた・・・・・・・。
IMGP4480-001.JPG

三猛郷鎮から元陽県郊外の村へ向かう。途中、豪雨に遭う。道の周りは深い広葉樹林が広がっていた。気になったのは、公安武装警察の厳しいチェク体制だ。昨年も今年4月に来たときにも雲南省でこれほど公安警察の影を感じなかった。昆明駅での大量殺人テロ事件が発生してから厳しくなったという。主要幹線ではチベットよりもある意味厳しいのではと思った・・・・・・。

IMGP4518-001.JPG
元陽県の市街地から60キロメートルほど離れた郊外の村。それまでのにわか雨が止んで、空が晴れ渡ってきた・・・・・・。
IMGP0173-001.JPG
稲がたわわに実っていて、いまだ刈り取っていない雨上がりの棚田は黄金色に輝いていた・・・・・・・。
IMGP4530-001.JPG
僕らが丘の上に登って撮影していたら、それを見つけた中国の観光客たちが車を止めて登ってきた。
IMGP0129-001.JPG
まず、この日泊まる宿を探してから撮影に出たが、また天気が崩れて辺りは濃い霧雨に包まれた・・・・・・。
IMGP0139-001.JPG
夕暮れの棚田はもう撮れないと諦めかけていたら、また雨雲が流れて空が晴れてきた。標高2000mの山岳地は、気象条件がめまぐるしく変化していく・・・・・・・。やはり日頃から神々に感謝の祈りを捧げていると、神は微笑んでくれる・・・・・・・・。  合掌  (写真は雨上がりの道端に咲いていた高山植物)
IMGP4534-001.JPG
元陽の棚田として観光化されてしまった老虎嘴棚田。いままで写真ではたくさん見てきたが、周りがこんなにも山々に囲まれているとは思わなかった・・・・・・・。夕方の時間だったせいか、観光客は誰もいなかった・・・・・・。
IMGP4629-001.JPG

IMGP0208-001.JPG
夕日は赤く染まらなかったが光はまわってきた・・・・・・。
IMGP4602-001.JPG
棚田の造形美の美しさには、目を見張るものがあった。同時に、この田棚を幾千年耕し続けてきた農民たちの労働の尊さをしみじみと感じた・・・・・・・。
IMGP4634-001.JPG
この棚田のすべてに水が張られたら、どんな風景になるだろうかと考えながらシャツターを切った・・・・・・。
IMGP4662-001.JPG

棚田の上にあるのは、観光客が増えたことによって新しくできた町、新町。ようやく雲が少し赤く染まってきた・・・・・・・。

IMGP4699-001.JPG
8月30日。朝5時半に宿を出て歩いて15分足らずの多依村の棚田で撮影の準備に入る。最初は濃い霧がかかっていたがしだいに朝日で少し明るくなってきた・・・・・・・。
IMGP4695-001.JPG
多依村とその前に広がる棚田。
IMGP4760-001.JPG
棚田はまだ深い霧のなか・・・・・・・。
IMGP0357-001.JPG
濃霧が少し晴れて初めて気がついたのだが、多依村の棚田の直ぐ前には、標高3000メートル級の山が連なっていた・・・・・・。
IMGP4846-001.JPG
道端で可憐に咲く高山植物。今回は同行の烏里君が高山植物の研究・撮影をしていることもあって、僕もずいぶんと付き合って撮影したのだ・・・・・・・。名前は聞いたがメモしてなかったのでわかりません。
IMGP4738-001.JPG
スケール感のある風景だった・・・・・・・。雲の上は晴れていて、雲の下はまだ霧雨の中だった・・・・・・。
IMGP0367-001.JPG
ようやく霧も晴れてきて、棚田が顔を現した・・・・・・・。
IMGP4800-001.JPG
朝8時までねばってようやくこの1点が撮れた。しかし、この後、勝村と言う村で朝食をとってから撮影しょうと思っていたら、また濃い霧に包まれて何も見えなくなってしまった・・・・・・・・。
IMGP4861-001.JPG

元陽の早朝での撮影の後、この日はベトナム国境の町・河口まで紅河沿いに約320キロメートルを走った。写真は中国側の国境。向こう側はベトナムの町・老街。中国国籍の烏里君は、ビザを取らなければ入国できないので、僕ら日本人だけでの5人でベトナムへ入国した。わずか3時間余りだったが、ベトナムのビールや酒を買って戻った。それは中国のビールはアルコール度数が2%前後なのに対して、ベトナムのビールは日本と同じ5%前後だったのだ。濃くがあって美味かった・・・・・・。
パスポートには、ベトナム入国の印が確かに刻印されていた。ひとつの記録としてうれしかった・・・・・・。ベトナムにこだわって取材をしていて、若くして死んだ親しい写真家だった郷司正巳君のことがしきりに思い浮かんだ・・・・・・・。

IMGP4869-001.JPGベトナムと中国とを結ぶ国境の橋で。ちょうど真ん中あたりで、紅河の川面を見つめるベトナム人。川向こうは、ベトナムの町・老街。
IMGP4934-001.JPG
国境の町・河口での夜。ホテルの近くの川べりのレストランで、パインお強などベトナム料理をベトナムビールでやった・・・・・・。同行した写真家たちも珍しいのか、写真を撮っていた・・・・・・。
IMGP4975-001.JPG
8月31日。河口の朝、8時30分に国境の門が開くので、ベトナムの人たちは走って一斉に橋を渡ってくる。露天の商売をする場所取りのためだという。
IMGP0382-001.JPG
国境の町だけあって河口には、武装警察が多かった。ベトナム側では警察官は一人も見なかったのだが・・・・・・・。(ホテルの窓から)
IMGP4995-001.JPG
朝食は近くの屋台へ。地元の人たちばかりで賑わっている店だ。見かけは大きなお蚕のような不思議な食べ物を食べた・・・・・・・。
IMGP5005-001.JPG
道路でさまざまなフルーツを売るベトナムの女性たち。
SDIM4751-001.JPG
ドラゴンフルーツ、パッションフルーツなどどれもが安くて美味しい。
IMGP5036-001.JPG
朝、河口を出て一気に雲南省の省都・昆明市まで約450キロメートルを走った。夕方には市内のホテルへ入った。窓辺から見た夕暮れの昆明の街。
SDIM4915-001.JPG
雲南最後の夜。色々大変な事もあったが旅の無事の終わりを祝って、「ごくろうさん会」をした。美味な雲南省産のワインで乾杯~!☆
SDIM4924-001.JPG
夕食後、烏里君と今年の4月にもあった彼の友人夫婦と4人で、足湯へ行った。今回の旅は、山岳地帯が多かったせいか、足湯にはあまり行けなかったが、最後の夜にようやく行けてうれしかった。10日間の旅の疲れが抜けていくようだった・・・・・・・・。
IMGP5045-001.JPG
9月1日午前2時30分。朝5時30分にホテルを出発するので、荷造りがすぐできるように準備しておいた。
IMGP5050-001.JPG
9月1日、深夜の自写像。カメラは今回の取材で使用したリコーの「ペンタクッスK-3」。コンパクトであるが、堅牢で重宝した・・・・・・・。

IMGP0385-001.JPG

9月2日。昆明空港ホテルの僕の部屋からの眺め。

本来なら9月1日、昆明発7時40分発CA4583便で上海行き、その後上海発14時15分、CA0919で成田へ。成田着18時の予定で帰国する事になっていた。しかし、トラブルが発生して僕だけ一人が飛行機の乗れず、昆明空港に残るはめになった。烏里君は、他の同行者とともに帰国してもらった。この件の”騒動記”を書くと長くなるのでここでは割愛する。僕は一人で白酒などをのみながら、のんびりと雲南省昆明市で過ごし、翌日無事、帰国したのだった・・・・・・。 (長いお付き合いをありがとうございました。 合掌)

このウェブサイトの写真作品、文章などの著作権は小松健一に帰属します。無断使用は一切禁止します。