写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.193] 2010年8月13日 ”宮沢賢治ワールドを求めて、夏のみちのくひとり旅” 花巻、奥州、種山が原、人首、北上みちのく芸能まつり、そして鬼剣舞い、鹿踊り・・・・・。

8月6日は、早めに盛岡を発った。祭りの後の寂しさを北の街は漂わせていた。花巻の賢治の母イチの実家を訪ねるのが目的だった。27日まで一般公開しているという賢治がつかった「産湯の井戸」を取材するためである。今日も34度をこえる極暑日。井戸は蝉時雨のなかにあった。氷水のなかに賢治が好きだったといラムネが冷やしてあり、1本100円で飲めるように配慮されていて、賢治の母の実家の人たちのやさしさを感じられて、一服の清涼をいただいた気がした。また、東北自動車道に戻り、水沢へ向かった。ここでは、2年前に開館した「奥州宇宙遊学館」に寄るためである。かっての水沢緯度観測所の本館を保存して記念館としたのだ。ここに賢治は足を運んでいて、「銀河鉄道」などの構想のヒントを得たといわれている。

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もう一箇所、撮影したい場所があった。それは種山が原だ。2度とも濃い霧か、雨だったので、夏空の広がる高原を撮りたかったのだ。急いで山道を走った。雲行きがどんどん怪しくなってなってきていたからだ。山頂に着いたときは、ぎりぎりだった。あわてて撮影していると間もなく大粒の雨が落ちてきて、あっというまに辺りは深い霧に包まれてしまった。「ゆ」の看板がでていたので雨宿りをかねてひとっ風呂浴びることにした。山の天候は本当に急変する。地元の人が「種山が原めったに晴れないよ・・・」と言っていたのを実感した。佐伯研二さんに電話をしたら、人首の実家に居るというので、寄ることにした。江刺名物の玉めんというのを食べさせてくれた。佐伯さんは乾麺の研究もしているらしくやたらと詳しい。南部蕎麦の乾麺では一番旨いという「土川そば」という乾麺を土産に持たせてくれた。いよいよこの旅の最終目的地の北上市に向かった。明日から3日間「北上みちのく芸能まつり」が始まるのである。ホテルに着くとシグマの桑山さんから2本目のレンズが到着していた。このレンズがあれば、明日からのスナップは安心して撮影できると思うと一安心であった。こころから感謝!!

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翌朝は早くから市外にある極楽寺へ向かった。護摩法要と念仏剣舞があるからだ。この辺りは、平安時代前頃までは一大聖地だったらしく、国見山文明という蝦夷一帯に影響をおよばしたほど山岳宗教地だったという。その遺跡があちこち発掘されていて、極楽寺はその一角にある。1時間ほど取材して、今度は市郊外の西側にある岩崎城址の鬼剣舞合同大供養に行ってみた。22団体の鬼剣舞が集っていた。北海道や京都、佐渡、東京など各地からも来ていた。じりじりと肌を焦がすような炎天下だから厚ぼったい衣装に面をかぶり、激しい踊りを長時間くり返すのだから大変だ。ファインダー越しに見ていても全身で呼吸しているのがわかる。倒れないかと心配になるほどであった。この鬼剣舞にしても鹿踊りにしても神楽にしてもみな動きが激しいのである。どちらかというとゆったりといたイメージだった神楽などとはまったく異なるのである。北の大地の短い夏を精一杯謳歌でもしているかのように・・・・・・。昼間は街中は死の街のように人はいなく、店はシャッターが閉まっている。しかし宵闇が迫る頃になると何処から人々が浴衣姿で集まって来て、通りは人々でいっぱいになるのが不思議な気がした。北上の3日間は、ホテルの近くの「一平」という30代の兄弟で切り盛りしている店に通った。宮古漁港から毎日新鮮な魚介類を親戚の業者が届けてくれているので旨い。もともと両親が宮古で店をやっていてのだという。手際よい二人の包丁捌きも気持ちが良い。色気は丸でない店ではあるが、僕は気に入った。兄弟の求めに応じて、その場で一句詠み色紙に揮毫したのである。「炎天下風生ませ入る鬼剣舞  風写」  長かった夏のみちのくひとり旅もようやく終わりかと思うとグラスに注いだ焼酎がほろ苦く感じるのであった・・・・・・・。

 

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☆帰京した翌日、7月に中国四川省を旅したみなさんと東京芸術劇場で再会した。群馬の3人からはそれぞれメッセージや写真が届いていたが、東京近郊の人たちは全員そろった。烏里君も5月に一緒に、四川省南西部を旅した大岩さんも来た。写真や俳句などの合評のあと近くの沖縄料理の店「みやらび」へ行って琉球舞踊を堪能しながら泡盛と琉球料理に舌鼓を打ったのであった。

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