写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.147] 2010年4月11日 春爛漫の宵、2日間で6軒の梯子酒という”青春時代”をやってしまった・・・・またもや深く反省!!


日本人は、古来からぱっと咲いて、ぱっと潔く散っていく桜が好きだという。季語にも落花、花吹雪、飛花、花屑、花の塵・・・などたくさんの美しい言葉がある。川面や池の水面に散ったさくらが流れるさまを花筏ともいう。俳人の高屋窓秋に「ちるさくら海あをければ海へちる」という美しい句があったのを思い出した。久しぶりの友人が訪ねてきたので、近くの黒目川の辺に花見にいってみた。川岸のさくらはいっせいに散りはじめ、菜の花も黄色い絨毯を敷き詰めていた。日本の春たけなわの風景がそこにはあった。



池袋の路地裏に「知音食堂」という中国本土の食堂に入ってるような雰囲気の店があり、最近よくここへ行く。たまたま席を隣にした四国・松山から来たというカップルと知り合った。最初は中国人と思ったが、れっきとした日本人だった。だいたい四国から遊びに来た人がこんな店に入ることが、信じられなかったからである。その後、いつも行く沖縄の店の「みやらび」にも2人は寄ってくれた。初めて会ったのにもかかわらず人生のことなどいろんな話をしたのだった。昨日は突然、京都の知恩院の平安養育院施設長をしている友人のOさんから「東京にいるから今から会えませんか」と電話があった。自らも浄土宗のお寺の住職をしながら、写真作家としても知られた人である。『知恩院の風光』というすばらしい写真集を出版し、第6回飯田市藤本四八写真文化賞も受賞している。1月の熱海以来の再会でもあり、長い付き合いの友人でもあるので出かけた。中国の写真家の烏里君も用事があったので声をかけたら駆けつけてきてくれた。



京都、四川出身の2人とも食通なのでやはり、料理が旨い店に行くことにしたが、案の定、土曜日の新宿はどこもかしこも人でごった返していて店は満杯。それでも昔から通っている穴場の店を三軒回ることができた。「京都もんでは、はいらへん店ばかり連れていってもろうて感謝してますわ」とOさんは喜んでくれ、烏里君も満足してくれた。最初の店は「樽一」。創業40年の鯨料理と三陸の食材と宮城の酒にこだわった店だ。先代がやっていた頃からよく通っていて、とくに僕は池袋と高田馬場の店が好きだった。いまは若き2代目が先代の遺志を継いで、新宿の店のみでがんばっている。この店で沖縄の泡盛付き合いの友人たちとばったりと出会った。田崎聡さんだ。あの有名なソムリエの従兄弟である。



続いて向かったのは、絶対に一見客は入れない店だ。この「三日月」という7~8人で満席となる店は、創業が昭和26年だからもう60年になる。現在の2代目の主人は、僕と同じ年で、体型も柔道部出身という太めだから昔から馬が合った。この店には作家の田中小実昌さんや吉行淳之介さんたちもよく通っていた。鮮魚がメインではあるが、肉料理も実は味がある。なんと言っても特製オムレツが名物だ。この日は新島の青むろのくさやをOさんが食べたいというので焼いてもらった。最後は台湾料理屋。これもまさしく歌舞伎町の隠れ家的な店であり、まず探せないだろう。ここで8年ものの紹興酒の熱燗で一日を締めて、お流れにしたのであ~る。あ~あ、歳のせいか疲れたなぁ・・・・・。

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