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2009年10月31日 「妙義・磯部地域の文学ー西上州を旅して」、「没後7年 麓惣介展」などを見つつ温泉に浸かった。

県立土屋文明記念文学館で
県立土屋文明記念文学館で


秋麗の昨日、朝早くから上州へと向かった。「写真集団・上福岡」の田中栄次会長と役員の山本恵子さん、写真研究会「風」同人の鈴木紀夫さんの3人が迎えに来てくれたのである。目的の一つは、田中さんがここ数年にわたり撮影している彼の故郷でもある西上州を巡ることであった。最初に行ったのは前橋にあるギャラリー「ノイエス朝日」で10月31日から11月8日まで開催される「没後7年 麓惣介展」だ。ちょうど飾り付けの真っ最中であった。責任者の武藤貴代さんの説明を聞いて、僕はこの詩人であり、俳人であり、画家でもあった麓という人と作品がすっかり気に入ってしまった。僕の仕事部屋に彼の無我ともいえる作風の絵画を飾りたいと無性に思った。「藪椿かざしに童女観世音」「野仏と椿の音を聞きゐしか」(句集『愛惜』)藪椿をこよなく愛したという麓の句である。


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飾り付けに手伝いに来ていたこの企画展の発案者でもある岡田芳保さんは、武藤さんともども長年の親しい友人である。この2人に連れられて上州名物の田舎そばの店へ、遅い昼食をご馳走になった。二八そばと帯みたいな太いうどんの合い盛り。地物の野菜天ぷらなどが付いたボリュームたっぷりのメニューに一同大満足。その足で岡田さんが館長を務める群馬県立土屋文明記念文学館へ行った。岡田さんはこの春まで県立図書館館長も兼務されていた。さっそく現在企画展示されている「妙義・磯部地域の文学ー西上州を旅して」(11月15日まで)を案内してもらった。正岡子規、島崎藤村、若山牧水、与謝野晶子、吉野秀雄、大手拓次、中村不折、青木繁、松本清張など妙義、磯部にゆかりのある人々と作品、エピソードを紹介するとともに、歴史、民間信仰、芸術分野などにも対象を広げて切り結んでいる。その膨大な資料を前に、よくぞここまで集めたものだと感嘆した。常設展示の「土屋文明ひとすじの道」は猿山係長が案内してくれたが、こちらも貴重な資料がわかりやすく構成されており文明の幽遠な生涯が理解しやすかった。


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知識をたくさんお頭に詰め込んだあと、いよいよ斜陽となりつつある妙義山へと向かった。僕は妙義山を間近く見るのは、小学生の遠足以来であった。妙義山は、赤城山、榛名山の三山で上毛三山と称され、群馬県を代表する山岳である。また耶馬溪、寒霞渓とならび日本三大奇勝でもある。白雲山(1104m)、金洞山(1104m)金鶏山(856m)の三峰からなる表妙義の荒々しい岩肌が創りだした奇岩怪石の自然景観には、確かにこころ惹きつけられるものがあった。金洞山の山麓にある中之嶽神社をお参りした後、妙義山服にある「もみじの湯」の露天風呂で湯浴みして、釣瓶落としの上州路を後にしたのである。久しぶりに郷里の友人たちとも再会し、写真仲間と過ごした愉快な晩秋の一日であった。

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