写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.191] 2010年8月10日 ”宮沢賢治ワールドを求めて、夏のみちのくひとり旅”早池峰神社例大祭、花巻・台温泉、稗貫・大迫、大沢温泉、奥州・人首、そして雨の五輪峠、種山ヶ原・・・・。

7月30日、東北新幹線・新花巻駅でレンタカーを借りてまず、向かったのは「宮沢賢治記念館」だった。館長の照井さんと副館長で学芸員の牛崎さんが待っていてくれた。賢治の生誕100年の頃以来だから、何と14年ぶりの来館であった。この記念館が創設されてから27年だから僕は27年前からここに来ていることになる。何か懐かしい気持ちが訪れるたびに湧いてくるから不思議だ。牛島さんから資料と1時間ほどお話を伺ったあと、写真が趣味で、記念館の周りの動物や野鳥、植物などを撮っていて、記念館の一角に展示してあるという館長の案内でそれらを見せてもらった。9月29日まで企画展として開催している「早池峰山と賢治ーいにしえの残丘幻想」は興味深く拝見した。館内に賢治関連の著書を展示してあるコーナーがあるが、そこに僕が三好京三、早乙女勝元、栗原敦さんとの共著で1996年3月に、日本図書センターから出版した『ジュニア文学館 宮沢賢治』全3巻がで~んと置いてあったのにはうれしかった。この本はA4版の大型本で、僕の写真約500点と文章も入っている。今見ると豪華本であるが、当時1セット定価37080円するこの本が発売と同時に3000セット完売してしまったといううから驚いたものだ。ともかく僕の代表作のひとつである。今回、新潮社が昨年の太宰治につづき「とんぼの本」シリーズで宮沢賢治を企画してくれたので、久しぶりのイーハトーブの取材となったのである。

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初日と2日目は、花巻温泉の奥にある台温泉に泊まることにした。もう30年以上花巻に通っているのに、台温泉は初めてであった。途中に賢治の童話「台川」の舞台である釜淵の瀧を撮影した。台温泉では老舗旅館の松田屋旅館に宿泊。そこの露天風呂で、たまたま一緒になった高知のFさんと夕食の時間も忘れて話しこんでしまった。奥さんと7年前からこの季節に約3週間、オートバイでツーリングに出ているのだそうだ。高知から北海道、東北を走って高知へ戻るという。農業をしていてこの季節だけ、少し時間が取れるのだという。僕が今月と10月に土佐へ行くし、土佐には、かれこれ30年前から行っていることを話すと一層話は盛り上がった。宿の人が心配して風呂場へ呼びに来たのであわてて部屋に戻った次第である。翌日再会を約束して別れた。31日、8月1日は、早池峰神社の例大祭宵宮と例大祭のため、70キロほど離れている大迫へと通った。「早池峰賢治の会」会長の浅沼利一郎さんとは、2日間、会ってこの地における賢治の行動について話を聞いた。浅沼さんは山岳ガイドもしていて早池峰山には100回以上登っているという。「どんぐりと山猫」に登場する笛貫の瀧や「風の又三郎」の舞台となった猫山、火の又分教場跡など興味深く取材した。

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早池峰神楽の取材では、第1回日本写真家ユニオン公募展で大賞を受賞した写真家のO君に会った。僕が審査委員をしていたので、覚えていて声をかけてくれたのであろう。早池峰山は登山口まで行ったが、2日間とも深い霧のなかでその山容は見せてくれなかった。3日目は賢治が小学校時代の夏によく父に連れられて行った大沢温泉へ泊まった。ここは僕の定宿でもう十数回は泊まっているだろう。久しぶりの菊水館は、昔とほとんど変わらないで出迎えてくれた。4日目は、奥州市の人首へ行って、「賢治街道を歩く会」の事務局の佐伯研二さんと会った。彼とはその後、また会うのだが共通の友人・知人も多く驚いた。15代目となる佐伯家もすばらしく、彼がそれを守っている。五輪峠、種山が原など一日僕を案内してくれた。高校教諭を50代で辞職して、自分が生まれ育った地と賢治の研究に情熱を注いでいるという。こういう地道な研究家がいるからこそ賢治研究は支えられいるのだと強く思った。花巻まで送ってくれた佐伯さんと別れて、一路、啄木や賢治が青春時代を過した盛岡へと走った。盛岡の街は1日からはじまった1万の太鼓が夏の夜空を奮わす「さんさ踊り」でごった返していた。20年来の友人の朝日新聞盛岡総局のT君が、ホテルを手配してくれていて助かった。10時過ぎに久しぶりにT君と再会を祝して乾杯をした・・・・・。

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