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2009年5月6日 五月晴れの「上州故里」に身をおいて

牧水の「枯野の旅」詩碑が建つ暮坂峠。峠を下った沢渡温泉に、僕の写真を全部屋に飾ってある有笠山荘がある

牧水の「枯野の旅」詩碑が建つ暮坂峠。峠を下った沢渡温泉に、
僕の写真を全部屋に飾ってある有笠山荘がある

 

夜更けなり肴は母の木の芽和え   小松風写

 

お彼岸に帰省できないこともあって、毎年のようにいわゆるゴールデンウィークに実家に帰るようにしている。ここ5年ぐらい前から本格的に、故郷・上州にレンズを向けるようになった。故郷をでて早、40年近くになってようやく写真を撮る決心が固まったのである。まったく個人的なことではあるが、ひとり暮らしの母が80歳を過ぎて、元気なうちに僕の体内に沁みこんでいる故郷という普遍的な残像と父母への想いを映像化して、かたちとして母に見て欲しいのである。 しかし、僕の育った風土に身を置くといつもの事ではあるが、だら~りとして体の力が抜けて、なにもする気がおきなくなってしまうのだ。母と暮らす五代目となる「五右衛門」と呼ぶ雑種の柴犬とお決まりの散歩に出ることだけが日課となっているだけだ。それに墓参り。これは本家や親戚のおじさんやおばさんの墓まで巡るとけっこうな時間を取られる。そして必ずやあらたに子ども時分に世話になった近所の人や親しかった人などが亡くなっているので、そこにもお焼香へ行く・・・・・。そんなことでたいていは2~3日は潰れるのである。でもなんだかこうした時がこころ安らぐから不思議だ。僕もあちらの世に近づいているのだろうか?・・・・・・・。 今回は2日目に突然、弟子の塩崎一家が訪れたので何時もひとりの母は大ハッスルで、小さなお客さんたちを歓迎していた。近くの山麓に行って、こごめやギョウジャニンニを採ったり、若山牧水の「みなかみ紀行」で知られる暮坂峠へ行って山独活を仕入れてきた。それに弟夫婦が山菜の王様と呼ばれるこし油やタラの芽、蕨を届けてくれたので二日間は、春山菜の宴会となった。塩崎君が甕だしの芋焼酎を土産につるしてきたので、僕にとってはいい酒盛りとなった。そうして子どもたちの笑顔や歓声がみんなの何よりの肴になったのは言うまでもない。

実家近くの山麓で、こごみ採りをする塩崎君一家の風景
実家近くの山麓で、こごみ採りをする塩崎君一家の風景

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