写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.773] 2014年11月21日 森山大道作品展「遠野物語」(30日まで/JCIIフォトサロン)、林忠彦写真展「日本の作家109人の顔」(25日まで/日比谷図書文化館)を見てから、創立55周年記念・東演「兄弟」(原作:余華 脚本・演出:松本祐子 27日まで、下北沢 東演パラータ)を観劇した・・・・・。

朝夕が、すっかりと寒くなった11月20日。2つの写真展と演劇を見るために都内へ出かけた。あいにくこの日は、冷たい雨が降り続く一日であった・・・・・・。

SDIM6099-001.JPG

まず向かったのは、JCIIフォトサロンで開催されている森山大道作品展「遠野物語」だ。この作品は、森山さんの処女写真展である。若き日に柳田國男の『遠野物語』に導かれるように何気なく足を向けたのが岩手県遠野市。この町に滞在した3日間、ただひたすらにシャッターを切り続けたと森山さんは回想している。東北地方内陸部のじりじりと焼け付くような暑い夏の日と、そこに生きる人々の素朴な在り様を若い眼で捉えていて共感を呼ぶ作品展だった・・・・・・。

SDIM6101-002.JPG

次に向かったのが、日比谷公園内にある日比谷図書文化館で開かれている林忠彦写真展「日本の作家109人の顔」。ご子息であり写真家の林義勝さんから手紙をもらっていたこともあり、必ず見ようと思っていた・・・・・・。林は、作家たちが「文士」と呼ばれていた時代、銀座「ルパン」に集う無頼派作家たちと出会ったのをきっかけに戦後の日本文学を担う文士たちの姿を撮り続けた。109人の作家たちの顔を通して、戦後の復興エネルギーに溢れる日本を描いている・・・・・・・・。約2時間余りかけてじっくりと観賞した。特に林自身がそれぞれの作家たちの写真に添えた撮影時のエピソードが興味深くおもしろかった。

SDIM6108-001.JPG

林忠彦の著書も図書館内で販売していた。僕も撮影したことがある司馬遼太郎、井上靖、大江健三郎、山口瞳なども会場に展示されていた。僕は林さんに会った事は何度かあるが、直接話した事は一回だけだった。僕が「ルパン」での太宰の写真のことを尋ねると「はじめて会って、それも最後の一枚のフィルムで、無理やり撮らされたような写真が俺の代表作とは、情けねえなあ~」と笑ったのが印象的だった。その時は、すでに車椅子生活だった。銀座キャノンサロンで一緒に写真を撮ってもらったのだが、その写真は何故か見つからない・・・・・・。

SDIM6106-001.JPG
20数年ぶりに入った日比谷図書館は、ずいぶんと様相が変わっていた。ちなみに僕の著書を何冊収蔵してあるか検索してみたら10冊あった・・・・・・・。
SDIM6120-001.JPG

SDIM6124-001.JPG

SDIM6132-001.JPG

SDIM6134-001.JPG

SDIM6136 (2)-001.JPG

上の5点の写真は、創立55周年記念・劇団東演公演「兄弟」より
原作は中国の現代作家で現在、最も注目され、次のノーベル賞作家候補と言われている余華。彼は中国社会を赤裸々に描き、その不条理と苦難を乗り越えてなお、したたかに生き抜いている人間群像を描き続けている。中国を25年にわたって取材し続けてきた僕にとってもリアルな舞台であった。毛沢東の「文化大革命」、国家経済至上主義である「改革開放主義」の大きな矛盾のなかでの弱者の視点にたった”悲劇と喜劇の混合”を描いた作品である。”金と食と性への欲望”は、時代や国、民族を超えても変わらない普遍的なものであることを痛切に感じた舞台だった・・・・・・。久しぶりに骨太な芝居を見て爽快だった。
「兄弟」の公演は、27日まで。下北沢 東演パラーダ
★お問い合わせ・申し込み先 : 劇団東演 03-3419-2871 [全席自由 一般4.000円、シニア(65歳以上)3、700円、学生2、500円]

SDIM6144-001.JPG
芝居を見た後、興奮冷めやらないので下北沢駅前の酒場に、今回の舞台の宣伝美術を担当したデザイナーのコガワ・ミチヒロさんと飛び込んで一杯やった・・・・・・。
SDIM6142 (2)-001.JPG

コガワ君とはかれこれ40年近い付き合いで歳も同じ。お互いに青春時代を生きてきた仲だ。一貫して彼はデザイナー、僕は新聞記者と写真家。今回は20年ぶりぐらいに組んで東演の舞台のポスターやチラシ、パンフレットなど広告に取り組んだ。以前、シベリア収容所が舞台となった芝居のポスターなどを僕の写真を使って一緒にやって以来である。こうして2人で飲んだのも20数年ぶりのことだった・・・・・・・。

SDIM6137-001.JPG
お互いに話す事は山ほどあったが、この夜は東演の芝居のすばらしさに乾杯~!☆ そして 「兄弟」の舞台の良さ、俳優たちの熱演、なによりも2人で制作した宣伝物の良さに乾杯~!☆
SDIM6147-001.JPG
下北沢にある炉端焼きの店の従業員とコガワ君と記念写真。割烹着が良く似合う女性だった。店内には芝居をする若者たちもいて、みないい顔をしていた・・・・・・。
SDIM6148-001.JPG

20数年ぶりに2人で呑んだので、興がのって終電に乗り遅れてしまった。彼の事務所が近い新宿・ゴールデン街の韓国料理店へ行ってまた飲みなおした。コガワ君の友人だという店のママさん。日本に来てもう25年になるという。現在は子ども3人が結婚して孫たちもみな日本で暮らしているという。午前3時過ぎに、マッコリとチジミとキムチなど土産に持って店を出た。

SDIM6156-001.JPG

 

彼の事務所に来たのも20年ぶりぐらいなんるだろうか。マッコリをやりながら話し込んでいたら辺りはすっかり明るくなっていた。時計をみたら朝の6時を回っていた・・・・・・。とにかく愉快な一夜であった・・・・・・。「兄弟」のポスターとチラシの前で。最近、新調した遠視鏡をかけて記念写真を撮った。 (撮影:コガワ・ミチヒロ)

このウェブサイトの写真作品、文章などの著作権は小松健一に帰属します。無断使用は一切禁止します。