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2010年1月19日 空海の言葉に向き合い、万葉集に親しみ、心に沁みる著作に触れた”休養の11日間”

              一身独り生没し、


              電影是れ無常なり。


              鴻燕、更も来り去り、


              紅桃、昔芳を落す。     「遊山慕仙詩」


1月3日、帰省中に風邪をひき帰京後、新年の挨拶回りを無理しておこなって、さらに風邪をこじらせたことは前に書いた。8日に外出して以来、今日まで丸11日間、家の中に篭っていた。13日に近くの病院へ肺炎の検査など診察に出たきりである。こんなことは本当に久しく何年ぶりであろうか。咳き込みと睡眠不足のため、頭が朦朧として仕事らしい事はなにひとつできなかった。しかし、ようやく快方に向かい始めている。僕の無神経なメールをみて、ご心配をおかけしてしまったこと心からお詫びいたします。元気で生きています。北海道から九州まで電話やメール、お手紙でご心配をして頂いたみなさん。本当にありがとうございました。


銀座百点no.2 566


さて、冒頭の文言は空海の言葉である。この間深夜眠れない時に、空海の言葉に向き合っていた。3年前に中国の唐の都だった長安(現在の西安)で、空海が遣唐使の一員として修行をしていたという青龍寺を訪ねたことがある。現在の寺は発掘された地に復元されたものではあるが、この場所にあったのは事実らしい。日本のそれも四国の人々が多額の寄付を寄せて復元されたと聞いた。身体が弱っていたときだけに、空海の言葉の一節一節は心に沁みるものがあった。他に万葉集にも目を通してみた。


銀座百点no.2 572


とにかく11日間は長い。何もしていないのだから・・・・・。他に読んだ書籍は、『入蔵日記ー矢島保冶郎』(チベット文化研究所)、『高橋克彦自選短編集』(講談社文庫)全3巻。作家の高橋さんとは長い付き合いになるが、ありがたいことに彼は著作の新刊は必ず送ってきてくれる。高橋さんのミステリー小説もいいが、僕は時代小説が一番好きだ。それにやはり新刊を送ってきてくれる2人の敬愛する写真家、水越武さんの『熱帯の氷河』(山と渓谷社)と石川文洋さんの『私が見た戦争』(新日本出版社)の2冊の写真集はさすがに見ごたえがあった。新鋭写真家の石川直樹君も最新刊『ARCHIPELAGO』(集英社)を送ってきてくれたので読んだ。「アーキペラゴ」とは、群島・多島海という意味。力作である。彼は「開高健ノンフィクション賞」を2008年に受賞しているが、作家・石川淳の孫にあたるとは知らなかった。原稿は「上毛新聞」からの依頼の1本のみを仕上げた。僕にとっては、言わば”休養の11日間”であった。(写真はネパールの神々。600年ぐらい前に石に彫られたブッタの青年像)

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