写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

2009年9月1日 白露に、民衆による「紙と鉛筆の革命」を想う

切れ長の仏眼にこぼる白露かな   小松風写

かってヒマラヤの国・ネパールで詠んだ句である。白露とは二十四節気の一、陽暦の9月8日ごろ。処暑から15日目にあたる。季語では、白露の節ともいう。丁度今頃の季節をいうのだろう。関東地方を直撃するはずだった台風11号は、拍子抜けするほど早々と太平洋上を北上してしまったが、台風以上に強大な激震が自民党、公明党の現政権を襲った。連日の新聞、テレビ等マスコミがそれについては、あれこれと論評をしているので、ここで僕がいまさらながら言うつもりはない。今後の成り行きを一人の日本人として、しっかりと見守っていくつもりである。しかし、一票の重さを改めて実感した選挙ではあった。紙と鉛筆による民衆の革命である。世紀末の1989年に僕は、東欧の東ドイツと南米のチリを取材した。当時、チリは南米で唯一残っていた軍事独裁国家であり、東ドイツはベルリンの壁に象徴される強固な社会主義国であった。それも東西二つの大国のお膝元で民主主義と自由を求めて民衆が立ち上がったことに深い感動を覚えたのだ。それはまさしく、今回の日本と同じように、血を流さずに紙と鉛筆による民衆の民主主義革命であった。しかし、民主党は多数派にものをいわせ驕るのではなく、少数の意見にもしっかりと耳を傾ける姿勢は忘れてはなりますまい。それこそが成熟した議会制の民主政治であるからだ。30数年前の若き日に詠んだ短歌がノートに記してあったので書き留めておこう。

         枯葉舞う師走の街角曲がりきて遠くアンデスの国思う冬

         冬深し目に沁む青き日本のこの空も遥かチリにつながる  (1976・冬)


民主党の圧勝を報道する8月31日の各紙朝刊と1989年、ピノチェト軍事独裁政権下でおこなわれたチリ大統領選挙。チリの民衆は、軍と一部の大資本家による弾圧に屈せず、紙と鉛筆の革命で、アデンジェ大統領以後はじめて自分たちの大統領を選出し、軍事政権を終焉させたのである。

民主党の圧勝を報道する8月31日の各紙朝刊と1989年、ピノチェト軍事独裁政権下でおこなわれたチリ大統領選挙。チリの民衆は、軍と一部の大資本家による弾圧に屈せず、紙と鉛筆の革命で、アデンジェ大統領以後はじめて自分たちの大統領を選出し、軍事政権を終焉させたのである。

このウェブサイトの写真作品、文章などの著作権は小松健一に帰属します。無断使用は一切禁止します。