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2009年9月8日 演劇集団いたわさ公演「ぼくと貧乏神」を観て考えたこと 

真夏日が、ぶり返したような日曜日の午後、演劇集団いたわさ 第5回公演「ぼくと貧乏神」を六本木にある麻布区民センターホールへ観に出かけた。ここでのいたわさ公演は3年続けて鑑賞してきた。この企画は「麻布演劇市」という港区の助成事業になっていて区在住、在勤、在学者は公演料金3000円がすべて無料と粋な計らいとなっている。僕は港区在住でないから本来は3000円支払って入場しなければならないのだが、この劇団の代表であるI君がいつも招待券を送ってきてくれるのである。会場は昼にもかかわらずほぼ満席の入りであった。


I君とは、かれこれ20年以上前からの知り合いである。新宿の「ぼるが」でたまたま隣合せに飲んだのがきっかけだ。彼は当時、月刊誌「暮らしの手帖」の写真部員だった。サハリンへ取材に行くのでアドバイスをしてくれというので、何かあれこれと飲みながら話した記憶がある。そんな彼も結婚をして、「暮らしの手帖」の編集長となった。ある日、劇団を作って公演するので観に来てほしいという手紙が突然来た。確か10数年前だったと思う。ワインを2本ぶらさぜて行ってみたら2~30人しかは入れないようなムンムンとした狭い所だった。もちろん本人たちは一生懸命だったが、内容は学園祭の出し物に毛が生えたようなものだった。しかしI君はそうした悪評にめげずにずーと役者と編集者の二束のわらじを履きつづけてきたのだ。そうした努力が実って行政にも認められて助成事業にもなったのだろう。


とりわけ今回の劇は、今の時代によくマッチしており、いい出来であった。会場も終始爆笑の渦で、僕も久しぶりに腹の底から笑った。「貧乏と貧しさは違う」、「貧乏はお金の問題ではない。心の問題だ」と現在、不況、リストラのなかで生きている庶民へやさしく問いかける今回の劇は、まさしく圧倒的多数の日本国民への共感のメッセージであろう。アンケート用紙に「あなたの貧乏指数は?」という記入欄があったが、いつも貧乏神さまと暮らしている僕ではあるが、こころの貧しい人間にだけにはなりたくないものだとつくづくと思った。I君、本当にこころゆたかな人間が生きていける社会へとなって欲しいものだね。楽しい芝居ありがとう・・・・・・。


演劇集団いたわさ 第5回公演「ぼくと貧乏神」・麻布区民センターホール(9月7日)

演劇集団いたわさ 第5回公演「ぼくと貧乏神」・麻布区民センターホール(9月7日)

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