2月29日、冬晴れの土曜日の午後、都下の日野市に向かった。劇団「ひの」の第82回目となる公演「新羅生門」を観劇するためである。この劇団は、「日野にルネッサンスを!」をスローガンに1973年に日野市に誕生したアマチュア劇団である。第1回講演は木下順二作の「獅子」、第2回はチェホフ作の「悪党」と創立から高い志を掲げて本格的な芝居に取り組んできている。こうして地域のなかに40年近くもしっかりと演劇という文化を根付かせ発展させてきたのは、驚くべきことである。劇団員の努力はもとより、それをサポートしてきた市民のみなさん、おそらくは行政も支援してきたのだろう。そうした人々の熱情によって、この地域アマチュア劇団は発展してきたのだ。2年半まえには自前の稽古場まで多くの人たちの募金で完成させた。それはまた、劇団代表で演出家の佐藤利勝さんの魅力と人柄による所も大であると僕は思う。
その新稽古場で今回の講演はおこなわれた。今後の講演は、2月5日(土)午後と夜、6日(日)午後の3回がこれからおこなわれる。入場券は一般1500円(当日1800円)、学生1000円(当日1300円)、申し込み(042-584-3436)。高校生から70代の人までが出演している芝居だが、見出しにも書いたが一見の価値がある。台本の奇抜さ、斬新さには驚かされた。また役者さんたちの演技も素朴でいい。リアリティがあるのだ。それを生み出したのは演出の力があってだろうが・・・・。
実は僕とこの劇団の付き合いは、11年程前にさかのぼる。2000年の第64回講演、アリエリ・ドーフマン作「谷間の女たち」のときに、僕の撮影した南米チリの写真を舞台の背景に10数点使ったことからである。この芝居はチリの軍事独裁政権下のなかでもひたむきに生きる女たちを描いた作品だった。僕が当時ピノチェト軍事政権下で取材してきたチリの女性たちの姿を芝居のなかに演出としてとり入れたのだった。以来、欠かさず案内をいただくので、その折々に観に来ていたが、今回は久しぶりであった。友人の芝居好きの沖縄出身の保育園の先生をしているYさんを誘ってきた。彼女も「自分自身の生き方に突きつけられたようなメッセージ性を感じた。ぜひより多くの人々に観てほしい芝居だ」と興奮気味に感想を語っていた。
劇団「ひの」のさらなる発展を願わずにはいられない・・・・・・。 がんばれ☆☆☆!!