写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.359] 2011年9月25日 探検家・矢島保治郎の足跡を辿ってーー浸食の国・横断山脈、川蔵公路周辺の山と谷を探る旅(1)・・・・・成都ー雅安ー天全ー康定ー新都橋ー雅江

レポートの第1回目は、矢島保治郎が1年間暮らした四川省の成都を出発して、約3ヶ月間滞在したダルッエンド、現在の康定を抜けて雅江までの4日間。写真は撮影順に並べている。

 

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日本の我が家を早朝5時前に出発。昨夜は2時間ほどの睡眠しかとっていないのでバスの中では眠りぱなっしだった。成田で同行者5人と現地ガイド役の烏里君と合流。中国国際航空422便は定刻の9時に離陸した。北京でトランジエットして成都には16時に到着。20数年間、中国の航空機に乗っているが、これほど時間が正確だったのはじめての経験だった。
常宿の武候伺前のホテルにチェクインした後はフリータイム。みなそれぞれ周辺のチベット街へ買い物に出かけた。夜は屋台の四川料理を食べに繰り出した・・・・・・・・。
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烏里君の友人の山岳ガイドをしているYさんが来てくれた。僕も3年ぶりの再会だったので懐かしかった。明日からの旅の成功を願ってみんなで乾杯をした。
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2日目。朝9時ホテルを出発。遅めの出発だが今日は比較的道の良い康定までの380キロメートルだ。最初に寄ったのは矢島も寄っている雅安。桃、棗、ザボン、梨などの果物が豊富に獲れる温暖な土地。標高は650メートル。街中を青衣江が流れる。現在は人口約100万人の大きな街となっている。
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昼食は天全という町。まだ標高は850メートルだ。古い町並みが至る所に残る。風情のある町だ。烏里君がどうしてもここの鳥肉料理を食べてくれというので小さな店に入った。「この鳥を食べたら他で食べれなくなりますよ~」とまでいうだけあって確かに旨かった。
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店内は地元の人で込み合っていた。
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白酒をやりながらの鳥は旨い。餃子ワンタンも・・・・・・・。
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店の下に下りてみたら朝鮮人参みたいなものを火で燻製状態にしていた。出汁にでも使うのか・・・・。
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この町を流れるのは長江の支流である大渡江。この川とはこれからの旅のなかで何度か会うことになる。
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康定に入る前の峠で。ここでいつも露天商からくるみ、ひまわりの種や乾燥フルーツなどを買うのだ。
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途中からダム建設のため道路がひどく、待たされることも多くなった・・・・・・・。
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康定に着いたのは暗くなっていた。谷間の町だから余計に日が落ちるのは早い。標高も2600メートルになっているので朝夕は冷える。狭い町の中を大きな2つの川が流れていることも気温を下げているのだろう。
矢島はここに2度来ていて合わせて3ヶ月間ほど滞在していた。烏里君はこの町で小学校から高校を卒業するまで暮らしている。現在も兄弟の多くがこの町にいる。いわば故郷である。彼のチベット族の友人がお酒を持って来てくれた。僕も1年前にこの町で一緒に飲んでいるので再会を喜んだ。
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3日目の朝。ホテルの前の屋台で麺を食べる。この日は高度順化のためこの町にもう一泊し、標高3830メートルの雅加峠にある中国高山植物園へ出かける。
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標高は一気に上る。みな頭や足がふらふらしてきた。高山病の初期症状。ゆったり行動し、深呼吸をくり返すことや水の補給をするように注意した。
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目の前には5000メートル級の山々が迫って来た。山霧の動きが早い。万年雪が所々に見える。
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峠の頂上はどこでもタルチョーとよばれる祈祷旗が張られ、石を積んだ仏塔が出来ている。風が冷たい。
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濃い霧の中、よく見るとリンドウが可憐な紫色の花を咲かせていた。写真のリンドウは4~5センチだが、さらに小さいものなど5~6種類のリンドウが咲いていた。
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この花は、烏里君に言わせると珍しい植物で、自分で温室になる袋を作り、寒さなどから守って花を咲かせる植物だという。
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池があったので撮影したが光線が悪く、ほとんど見えないでしょ。
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馬が放牧されていたので近寄ってパチリ。 一瞬、霧が晴れて背後の山容が見えた・・・・・・。
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同行者と記念写真。長崎の写真家Y君、山岳写真家のKさん、写真研究会「風」の鈴木さんの3人は写真家。他に印刷関係者のKさん、この4月まで保育園に務めていたYさんの5人だ。それに烏里君と僕、ドライバーの総勢8人のメンバーである。
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明日、越えていく山々が霧の中から顔を見せた・・・・・・・。
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康定はチベットへの玄関、かっての西康省の省会でカム地方最大の都市。矢島が滞在した101年前はと言うと、人口1万余。チベット族7割、漢族3割だと矢島は書いている。チベットからのキャラバン隊が往来して交易の町として栄えている様子を父親宛の手紙に書き送っている。僕も1年ぶりの康定が懐かしかった。街中に大きな河が2本流れていて、昨今の温暖化による集中豪雨など考えると少し心配になる。この町には様々な民族、文化、宗教が触れ合って独特な雰囲気をかもし出している。夜はチベットの歌と踊りを見せる店に行った。そこで昨年、成都で知り合った成都の藝術出版会社の社長と偶然に再会して乾杯をした。
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矢島が康定から一人で一日歩き泊まったと日誌に記してある「チリコ」という地名はいくら調べてもなかったが、この先はいまも人家はなく最後の村・折多村(標高3300m)が矢島の言う「チリコ」ではないかと思われる。ここなら1日で康定から歩いてこれるからだ。いまも数十軒の集落がある。
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康定から川蔵公路の最初の峠、折多山峠は4298m。ここからは純粋なチベット族が暮らす地域だ。山頂にはたくさんの祈祷旗が風にはためいていた。
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この急坂を自転車で登って来る中国の若者がいた。その根性は見上げたものがある。
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次の峠は高弥寺山峠、4412m。
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高山植物が咲き乱れる草原で記念写真。僕は「島ぞうり」と呼ばれるゴムぞうりで歩いている。後方には白く光っているミニヤ・ゴンガ群峰が雲に見え隠れしていた。
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はるかに延びる標高4000メートル以上の高原の道をみていると100年以上前に、独りこの道を歩きラサへ向かった矢島青年のことがしきりと思われるのであった・・・・・・・。
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道端には色とりどりの高山植物が咲き乱れて僕らの眼を楽しませてくれた。矢島も歩きながらこうした草花をみて、遠き故郷・上州の山河を思い出したに違いない・・・・・・・・・。
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成都を出発して3日目、矢島も泊まっている渓谷の町・雅江に到着。狭い谷間に流れる雅龍河にへばり付くようにある小さな町だ・・・・・・。

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