写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

[no.1005] 2017年2月13日 「ReaIitas レアリタス」(発行:株式会社日立製作所)の巻頭グラビア”辺境の息吹”にパプアニューギニア、エクアドルーガラパゴス諸島、中国ー成都の3回連載をした~!☆

春めく日 夜光貝の匙 触れてゐる  風写

早いもので立春も過ぎ、2月も半ばになろうとしている。7日に9日ぶりに外出をしてからまた、この6日間家に籠りっぱなしだ。夜遅くゴミ出しに行くぐらいで一歩も家から出ないのだから身体にはあまりよくないであろう。でも、食事は家にある食材を利用してしっかりと作り、食べている。

気候はまだまだ寒いので夜はほとんどが鍋料理となる。日によって味付けを変えないと飽きてしまうので醤油(関東と西国では全く味が異なる)ベース、塩(ヒマラヤ、アンデス、チベット、隠岐、沖縄、奄美・喜界島、土佐など)仕立て、味噌(赤味噌、白味噌、合せ味噌など地方によっても味が違う)、胡麻(喜界島産が良い)、豆乳、中華風仕立てなどその日の気分によって変える。鍋の中身は白菜、キャベツ、もやし、水菜、ジャガイモ、サツマイモ、きくらげ、大根、玉ねぎ、長ネギ、ニンニクなどこれも在庫を見ながら日替わりにする。そこに豆腐、鶏肉、豚肉、牡蠣、アサリ、イワシ団子、ウインナー、卵、昆布、餃子などなど。蕎麦を入れる時もある。安く上がって、たっぷりと楽しめ、体も芯まで温まるからやはりこの季節は鍋が王道であろう・・・。

ではそれ以外の時間は何をしているかと言えば、27年間におよぶ中国大陸を取材・撮影したポジフイルムを眺めている。1本、1本、1カット、1カットづつだから結構な時間がかかる。せいぜい頑張っても一日に100本(3、600カット)見ると目の底が疲れてくる。まだまだ当分終わりそうもない。しかし、自分の若い頃に撮った写真を見ることは楽しいものだ。新しい発見もある。独りワクワクした日々を送っているのである・・・・。

SDIM1318.jpg

この雑誌への連載は、今までにヒマラヤシリーズ、中国シリーズ、チベットシリーズなど今回と合わせると15回ほどしている。以前は8ぺージだったが、今回からは諸般の事情もあり残念ながら5ページとなってしまった。それでも文章は2、000字ほど書けるので一応の表現はできる。ありがたいことである・・・・。 合掌
(表紙の絵は画家の山口はるみさん。時季の名一句をイメージして描いている)

SDIM1315.jpg

今回のシリーズの第1回目は「精霊たちの色彩マジックーパプアニューギニア」、第2回目は「太古の世界をイマジネーションーエクアドル・ガラパゴス諸島」、第3回目は1月24日に発行されたばかりだが、「英傑のまなざしに悠久の時を想うー中国・成都」だ。成都は昨年撮影したものも4点ほど使っているがほとんどは以前に取材したときの写真だ。

SDIM1311.jpg

 

この雑誌を編集企画、取材もしている編集者のY君がVol.16号の「編集後記」に書いた文章を紹介させていただきたい。彼が若い頃に、まだ編集プロダクションの会社にいたとき何度か地方に雑誌の取材に行ったことがあった。その時に田舎が僕と同郷の上州だということで親近感を持った。俳句もたしなむ文学青年でもあった・・・・。

人生に彩りや豊かな時間をもたらす「協創」という考え方もある。

今号の巻頭グラビアからReaIitas誌ではおなじみの写真家・小松健一さんの連載が始まる。現在、30年に及ぶライワークとしての「中国大陸」の集大成に向けて、四川省、貴州省、雲南省のシャングリラ地方などを繰り返し訪れては、取材撮影をしている。

小松さんとは、長いおつきあいになるが、最初に彼を知ったのは写真ではなく、「朝日歌壇」という、朝日新聞掲載の短歌投稿欄であったと思う。そこで小松健一さんの名前を初めて目にし、繊細でありながら、芯の感じられる言葉世界にひきこまれた。

海なりが夜どうし障子ふるわせる貧しき漁村の屋根低き部屋

彼のナイーブな内なる志向と社会への広い問題意識は、写真のみならず言葉の表現にも表れている。俳句にも長年親しんできた。「風写」の俳号で「無頼とは愛しきものよ桜桃忌」と詠めば、ヒマラヤ行では「秋桜砂塵の村の昼深し」と詠む。太宰治、宮澤賢治、石川啄木・・・日本の近代文学の原風景を求める旅は今も続く。

「協創」という言葉は、ビジネス用語に用いられるが、人と人の出会い、人とさまざまのモノや出来事との出会いにも応用できるのではないだろうか。複数の事象が響き合い、深め合い、そこから生まれる新しい価値は、人が生きて行く時間を彩り豊かなものにしてくれる。小松さんの生き方をみて、ふと思った。

 

このウェブサイトの写真作品、文章などの著作権は小松健一に帰属します。無断使用は一切禁止します。