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[no.155] 2010年5月1日 創業昭和17年、地元に愛され68年間続く居酒屋「三福」に、僕の作品が飾ってあるのだ!


今日、5月1日はメーデー。労働祭、働く者の祭日である。水原秋桜子に「踏みしだく芝の青さや労働祭」という句があるが、ここ最近はほとんどと言っていいくらいにそうした実感はない。労働組合や学生運動も以前のような活気がなくなっているようで、メーデーの集会もあんまり聞かなくなった。僕自身ももう30年以上は参加していない。20代の頃の新聞記者時代は、職場の同僚たちと旗やプラカードを掲げて、会場の代々木公園に行ったものだった。デモ行進の解散後は、みな昼間からビールで焼き鳥と言うのが定番だった。若い女性もたくさん参加していて、新緑が5月の風にゆれ、彼女たちのはちまきをした長い黒髪から香ってくるシャンプーの匂いが新鮮だった記憶がある。




陽が傾きかけた頃、散歩がてらに駅前に置いてある自転車を取りに行った。帰りに僕の作品を購入して店に飾ってくれている”洒落た居酒屋・三福”へ寄った。喉が渇きビールが一杯飲みたかったのである。僕がこの店に行き始めてから、かれこれ27~8年になるがその間、10年間のブランクがある。東京の事務所をたたんで戻ってから、また行き始めて4年目だ。この「三福」という店は、昭和17年の創業で、今年で68年目となるからこの界隈では老舗である。現在、2代目主人の小寺長文さんと3代目の息子さんの正修さんが厨房に入り、客の仕切りは女将の時子さんがテキパキと切り盛しているのだ。鮮魚から肉料理、家庭的な手料理まであり、どれもが旨く安いときているからいつも地元のお客さんで満員だ。そこの女将が2作品を購入してくれたのである。奥座敷の床の間に「土佐の記憶ー津和山神楽」が飾ってあった。もう1点は「少年の海ー熊野灘」。佐藤春夫の小説『わんぱく時代』をイメージした作品である。何はともあれ、絵画も写真も今まであんまり興味もなく、買ったこともなかったという女将が芸術というものに関心と理解を示し、僕みたいな貧乏写真家を陰ながらサポートしてくれるのはうれしい限りである。今宵のビールはとりわけ旨かったぜよ。・・・・・合掌

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