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[no.149] 2010年4月17日 「これでいいのか!木村伊兵衛写真賞・・・」と氷雨のなかに思った一日でした。

 


昨日は、久しぶりに都内にでた。「第35回木村伊兵衛写真賞」の受賞式に行ってみようと思ったからだ。この賞は、朝日新聞社と朝日新聞出版社が主催する歴史のある賞である。僕も十数年前から推薦者の一人として係わってきたが、昨今のこの由緒ある賞の受賞作品が新人写真家が対象とは故、あまりにもその内容に納得できないでいる。今回の受賞者は、高木こずえさんの写真集『MID』、『GROUND』である。僕が久しぶりにこの受賞式に出たのは、選考委員をはじめ、多くの写真家たちに「何故、この作品が受賞したと思うか?、どんな感想をもったのか?」聞いてみたいと思ったからである。興味しんしんで会場の後ろで選考経過を聞いていた。



今年の選考委員は、篠山紀信、土田ヒロミ、都築響一、藤原新也の4氏である。年に一人しか受賞できない日本を代表する賞であり、写真家「木村伊兵衛」の名を冠とした賞であることをまず、認識しておく必要があろう。受賞者は今後、写真家として大きく育っていくと期待されていることは言うまでもない。選考にあたっては当然そうしたことも含めて考慮しているだろう。写真家として日々がんばっている多くの若者たちにとっては、この賞は憧れであり、大きな目標でもあるのだ。選考委員のひとりと20分ほど話をしたが、4人のなかでも意見が割れたという。その委員は断固反対したという。僕が聞いた十数人の著名な写真家や写真評論家のおおよその感想は「よくわからないなあ~?」だった。選考経過を代表して報告したもう一人の選考委員は、「実は僕もよくわからないのですよ。作者の彼女自身も解らないのではないの・・・・」と半ば開き直りにもとれる発言をしていた。「みんなが解らない作品なら何故受賞したんだ!」と僕は率直に問いたいと思った。「みなさんこの4名の選考委員の先生方のお名前は、しっかりと覚えておきましょうね」と呼びかけたい心境である。



受賞者の高木さんはというと小柄で、まだあどけない少女のような笑顔で、僕のカメラに向かってブロンズ像の正賞を持ったままVサインをした。いろんな人たちと久しぶりに話しをした。とくに細江英公さんと桑原史成さんとはたっぷりと。史成さんと飲むのは1年ぶりぐらいになるので、パーティの終了後、有楽町駅のガード下の行きつけの焼き鳥屋へ行った。今年、日本写真家協会会員となった烏里烏沙君も一昨日飲みすぎて調子が悪いと飲まなかったが途中まで付き合った。この店は薩摩料理に泡盛もおいてある個人周りとしているがいい店である。桑原さんは今年の8月に日韓併合条約締結100年を期して「激動の韓国」という写真展を銀座で開催すること。今月の23日からは沖縄の普天間米軍基地の取材に行き、その足で、彼のライフワークである水俣の取材へ行くんだと昔と変わらない例の早口で、熱く熱く語るのであった。森鴎外と同じ島根県津和野出身の桑原さんと今度、鴎外のことで対談でもやろうかとも話し合った。外は氷雨から季節はずれの春の雪にかわっていた。全身真っ白になったが、どうにか無事帰還することが出来た。

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