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2010年2月18日 久保田博二さんと細江英公さんのトークを聞き、写真家として襟を正される思いがした。

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朝、眼を覚まして外をみると雪が降り積もっている。今年になってこれで8度めの雪だ。近年、地球温暖化問題を深刻に受け止めてきているが、その割には今年の日本はやけに寒い。冬季オリンピックが開催されているカナダのバンクーバーでは、雪不足に悩まされている様ではあるが・・・・・。昨日、2月に入って初めて都内へ出かけた。一昨年までの写真団体の役員をしていた時のことを考えると信じられないような生活環境の変化である。会議だ、打ち合わせだ、業界への挨拶回りだと今考えると、よくもあんなに出かけていたものである。僕の日記帖をめくってみるとこの5年間で、年間平均500時間ぐらい費やしていたことになる。勿論、ボランティアであるが、僕ら写真家のため、日本の写真業界のために、少しでも役立つことが出来たらと思ってやってたこと、自分としては全くの悔いはない。


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昨日は、(社)日本写真家協会の第3回国際交流委員会セミナー「久保田博二の軌跡と展望」に参加するためである。聞き手は細江英公さんだ。久保田さんは「信仰も生活習慣も美意識も、その地の自然風土によって成り立っている。その全てが独自的だ」という視点にたってこの50年間、世界を撮り続けてきている。直接本人からお話を聞ける機会はそうはないので、出かけたのである。細江さんのトークにも魅力があった。会場は100人以上の参加で満席だった。僕は30分前に行って前の席を確保していた。話は1947年にロバート・キャパやカルティエ・ブレッソンらによって創設された「マグナム・フォトス」についてから始まり、'65年にマグナムに参画して渡米したニューヨーク、シカゴ時代、'69年の復帰前の沖縄取材、'75年のベトナム・サイゴン陥落取材、その後の中国全省、アメリカ全州、アジア、日本などの取材活動を様々なエピソードを交えながら語ってくれた。


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そして70歳を過ぎたいまもなお、全世界に51名しかいないマグナム正会員であり(アジアでは久保田さん一人)、現在も「世界の食料」をテーマに旺盛な取材活動を展開しているという。5月には14度目となる北朝鮮への取材をすると意気込みを語っていた。会場の若い写真家や外国の人たちからの質問にも「夢は持ち続けること、諦めないで絶対にやる、死んでもやり抜くんだという気持ちが大切だ。資金が無いなどと諦めてはだめだ・・・・・」と熱いエールを送っていた。会の終了後、参加していた「風」同人の鈴木紀夫さんと塩崎亨君と近くの奄美料理を出す店に行ってみた。僕の顔を見るなり「何年ぶりかね~、あんまりご無沙汰しているのでヒマラヤで死んじゃったかと思ったよ・・・・」と女将に言われ何故かうれしかった。2年前に入れた芋焼酎の一升瓶もとっておいてくれて出してくれた。みんなも感激し、今日の講演を肴に、大いにお湯割りの盃はすすんだ。「俺たちが中国を5000キロ車で走って大変だと思ったが、久保田さんはアメリカをキャンピングカーで25万キロ走ったという話には参ったね・・・・・」と久保田さんと同世代の鈴木さん。もっともっと精進してがんばらねばとつくづくと思った。店の外に出ると火照った顔に、都会の雪がちらついて気持ちがよかった。

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