写真家 小松健一・オフィシャルサイト / Photographer Kenichi - Komatsu Official Website

11月25日 観光化されてしまった信仰の山、高尾山とインドに暮らす娘さんの写真展を見て。 

中国取材もあと10日余りと押し迫った連休最後の日、トレーニングを兼ねて20数年ぶりに高尾山へ友人と登ってみた。高尾山はご存知標高600メートル足らずの低い山ではあるが、都心から50キロ余りで行けることもあり、最近とみに家族連れなどに人気が高まっている。山中には不動明王の化身といわれる飯縄大権現を奉った高尾山薬王院有喜寺がある。創建は今から1265年前、天平16(744)年というから古い歴史をもつ寺である。古来、修験道の山伏たちが篭る天狗信仰の霊山としても広く知られている。


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実は僕も1970年代初めから80年代半ばまでは毎年夏には3日間、この薬王院の宿坊に寝泊りして毎朝、護摩焚きの修行を受けていたのである。いや、何も宗教上のことではなく写真の道場がここで開かれていたのでそこに参加していたのだ。いまは亡き、田村茂先生、濱谷浩さんの実兄の田中雅夫先生、伊藤逸平先生などそうそうたる方々が指導しての講座であったからまだ20代から30代の僕などは、ただ黙ってそこにいるだけでもしあわせだったものだ。何度目かに参加したときに300枚ほど4ッ切にプリントして作品を担いで夜道を登って行ったら先生方がえらく誉めてくれて「夏期講座賞」という参加者の作品の中から1点に与える最高賞をいただいたことがあった。参加者は日本全国から腕自慢の写真家たちが100人を超える年もあって、僕にとっては夢の様な出来事だったので、すごくうれしかったことを昨日のように思い出す。


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久しぶりの高尾の山はすっかり観光化され、変貌していて昔の面影は見る影も無かった。特に参道はすべて舗装され、ハイヒール姿や乳母車を引いての登山客の多さには眼を覆うばかりであった。これも時代の流れであろうが、あの巨木杉の深い森に霧がたちこめて何とも霊験あらたかな雰囲気であった高尾の御山が、お気楽なピクニックコースとなっていたのである。外国人観光客の姿も目に付いた。これも仕方のないことではあろうか・・・・・。帰りに清瀬のギャラりーいちご(042-494-0529)で、12月5日まで開催している「赤い大地から インド紀行写真展ー北インド・ラダック地方」によってみた。


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旅した人は、僕が1歳の時から知っている近所の友人の娘さん。いまから8年ほど前に突然、僕を訪ねてきて、「おじさんヒマラヤへ織物を学びに行きたいから協力して!」という。話を聞くと真剣なのでいろいろと協力したのだが、その後、何故か向こうの生活にはまってしまって、ネパールやインドで暮らしてすでに6年にもなる。友人は最初は帰国しない娘を怒って、僕はすっかり悪者になってしまったのだが、いまは時々夫婦でインドを訪ねたりするようになった。その彼女をパートナーのスロベニア出身のジャーナリスト・アレス コチャン君がそれぞれの風土なかで撮影した写真を30数点展示している。黄色く色づいた欅並木を半地下の窓辺に見ながら美味しい手作りケーキとコーヒーを味会うのもおつな楽しみ方ではある。

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