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2009年10月28日 映画「ウ”ィヨンの妻-桜桃とタンポポ」、「沈まぬ太陽」をハシゴして思ったこと。

 

台風20号が去った今日、日本列島、北海道から沖縄まで快晴の秋晴れ。まさにこうした天候を名実ともに日本晴れというのだろう。昨日、何十年ぶりかで映画のハシゴをした。2本、5時間を越える映画鑑賞であった。昔はどの映画館も3本立ては当たり前。時には5本立ての出血大サービスなんていうときもあったりした。今考えるとよくも飽きもせず、疲れもせずに真剣に見続けたものだと感心したりもする。みんな娯楽に飢えていた時代だった。50円玉を握りしめて町の映画館まで1時間以上かけて歩いた。、30~40円の映画館代を払い、残りのお金で、こうせん棒にうさぎ玉、せんべいやらなにやらを買って一日楽しむのである。どの映画館の入り口にも大抵は猿小屋などがあって子どもたちは物珍しそうに日がな眺めていたものであった。


自宅の裏手から眺めた空

自宅の裏手から眺めた空


先ず見たのは「ウ”ィヨンの妻ー桜桃とタンポポ」(監督・根岸吉太郎)だ。先の第33回モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞したばかりの注目作品である。原作は太宰治の同名の小説を中心に『きりぎりす』『桜桃』などの作品からのエッセンスを織り交ぜたもの。出演は、浅野忠信、松たか子など。僕はこの1年間太宰と格闘してきたこともあって、どんな映画に仕上がっているのか興味を持って足を運んだのだ。今どきの日本映画にあっては時代考証など丁寧に作られた映画だと思った。映像もキラリと光る美しい場面が何ヶ所かあった。主役の2人を中心に脇役もそれぞれ個性派の役者で固めており、演技にも不自然さはなく、混沌とした戦後日本の世界へ入って行くことができた。だが、・・・・いまひとつしっくりと来なかったのは何故か。それは多分太宰作品の本質への迫り方であろう。根岸の描き方もその一つではあろうが、僕が迫った太宰の世界とは、ちと異なるのである。それが見終わってから何か引っ掛かる要因なのであろう。しかし、僕は自殺はしなかったものの、生き様そのものは映画で描かれていた様と同じであったとつくづく反省したのであった。


ネパール・カトマンドゥから見上げた空

ネパール・カトマンドゥから見上げた空


その足で次の映画へと向かったのは、「沈まぬ太陽」(監督・若松節朗)だった。この原作となっているのはご存知、山崎豊子の同名の小説で、累計700万部の大ベストセラーである。今、毎日のニュースで話題となっている日本航空をモデルしたもので、実際におきた墜落事故なども鋭く描いているドキュメンタリー小説である。出演は渡辺謙、三浦友和、石坂浩二など豪華配役を揃えている。久方ぶりの日本映画の大作で、上映時間も3時間を越え、途中に10分間の休憩が入る映画も久しぶりであった。夜であったにもかかわらず観客が少なかったのは残念であった。確かに重い内容ではあるが、現代に生きる僕らとしては決して眼をそらしてはならないテーマだと思う。ぜひ見て欲しい。一言いえば、もう少し脚本を詰めるべきではなかったか、ということである。この映画の主人公のモデルになっている彼は、JALを退職後、プロ写真家となり僕ら日本写真家協会の仲間として、主に好きだった西アフリカのサバンナの動物たちを亡くなるまで撮りつづけていた。   合掌

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