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2009年5月2日 太宰治蘇生の地・甲州への旅

山梨県立文学館の全景(甲府市)
山梨県立文学館の全景(甲府市)

ロビーでくつろぐ津島園子さん(奥の人)
ロビーでくつろぐ津島園子さん(奥の人)

 

芋の露連山影を正うす  飯田蛇笏

本来は万国の労働者の祭典の日であるメーデの5月1日に、甲府へ行った。この日、山梨県立文学館で、開館20周年記念・太宰治展・生誕100年のオープニングセレモニーがあるため、そこに新潮社のK編集者と参加したのだ。式典には、太宰治の長女・津島園子さんをはじめ、多数の関係者が参列していた。太宰の面影をたたえている園子さんが、静かに語った母、石原美知子の甲府での思い出のエピソードは、太宰との結婚前の女学校の教師時代の話で、美知子の人柄が想像できて心に沁みた。会場は僕の写真の師である田村茂が撮った三鷹時代の太宰の写真が多く飾られてあり、感慨深いものがあった。 その後、美知子と新婚生活を送った場所やよく通った喜久乃湯、散歩した御崎神社など甲府における太宰のゆかりの地を巡った。美知子を太宰に紹介し、仲人までした井伏鱒二が、どうゆう縁で石原家とつながったのか、興味をもった。(後日、津島美知子著『回想の太宰治』にそのいきさつが書かれていることを知った)日差しの影が長くなった頃、愛宕山へ登って甲府盆地と富士山を撮影した。そしてその足で御坂峠へと急いだ。先月来た時は、河口湖畔の染井吉野が満開であつたが、今回は峠に向かう道道の山桜がなんともうつくしかった。峠にある天下茶屋は、井伏や太宰が長逗留している。ここの八重桜も夕暮れのなか満開であつた。薄赤く染まった富士山と暗紫色の空には、三日月がかかっていて幻想的であった。前回は山中湖で深夜11時まで粘って取材をしたが、今回は早めに山を下って、甲州牛のワイン付けのステーキをK氏にご馳走になり満足いっぱいで帰路についたのだった。

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