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2009年4月27日 川田公子のみやらび太鼓と熊野からす

青山・草月ホールにて。川田公子率いるみらび太鼓の公演

青山・草月ホールにて。川田公子率いる「みらび太鼓」の公演

 

「川田公子・太鼓の世界」を青山にある草月ホールに聴きにいった。彼女の公演は今回で39回目になるというが、僕は3年前の沖縄の国立劇場以来であった。今回のテーマは、”熊野からす”と言う神話の世界を川田をはじめ、みやらび太鼓の女性の面々が、勇壮な奥熊野太鼓の男たちの協力を得て、表現するというものであった。

この熊野からすとは、神武一行が東征のとき、導いたというヤタガラスのこと。中国古代説話では、太陽の中に棲むという3本足の赤い巨鳥で、金鳥とも言われている。ちなみにサッカーの日本代表のマスコットマークは、このヤタガラスである。

さて、今公演は沖縄の血を色濃く受け継ぐ、川田が編み出した舞踊的な太鼓打ちがいかんなく発揮されたと言えよう。毎年、夏になると沖縄島のあちこちで響きわたるエイサーの太鼓のリズムが彷彿させられた。かっての和太鼓の概念を払拭させられた観客は少なくなかったであろう。そこへもってきて、熊野の霊験な信仰心のなかで育まれた奥熊野太鼓との夢のコラボレーションである。照明や音響など演出も行き届いていて心地よかった。僕は、師走の大都会の一隅での、わずか一時間半余りの時間ではあったが、この年の最後に、至極の時をいただいたと思ったのである。そして、流球から薩摩、土佐、そして熊野へと連なる黒潮の流れとその無骨な文化を日本人の一人としてうれしく思ったのであった。 (2008年12月11日 記)

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